So-net無料ブログ作成
検索選択
前の10件 | -

GW無料配信中+コミティア [アナウンス]

直前のお知らせになってしまいましたが、明日開催のコミティアに参加します。


2017/5/6 東京ビッグサイト

 配置No. W60b SUSSANRAP

このポスターが目印です♪
ウェブ用J庭大スタンド用ポスター.jpg

 

コミティア自体参加が久しぶりなのですが、今回はメインがイアンシリーズなのでBLエリアに初めての参加になります。イアンシリーズの短編の無料配布など行いますので、おついでがありましたらぜひお立ち寄りくください。

 

その他、持参品の詳細などはpixivをご覧ください。

pixiv: 5/6コミティア【無料配布・再販あり】





合わせてkindle本二冊が無料配信になっております。未読の方おられましたら、ぜひご利用ください。



2017/5/5 - 5/7

(夕方5時頃開始・終了)

Amazonの状態により時間が前後することがありますので、

価格欄をご確認のうえダウンロードしてくださいね♪

 

 

 

 

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

新年のご挨拶+二冊無料配信中です。 [アナウンス]

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

年末のコミケでは、初めて創作JUNE/BLでスペースをいただけました。こちらでは告知できませんでしたが、お立ち寄りくださった皆様、ありがとうございました! (叶姉妹の一般参加に至るまでの見事な心配りには、正直感動しました!)

今回はイアンシリーズをメインに持参しましたが、進行中の新刊が出せず残念でした。今年は形にしたいとがんばっております。こちらのブログでは新作のアップがほとんどなくなってしまったので、検索で過去のSHERLOCK二次からお読みいただいている方も多いと思います。(シーズン4の行方、気になっております!)あまり間口の広い趣味/作風ではないかもしれませんが(^^;)、もしお楽しみいだたけた部分がございましたら、ほかの作品も覗いていただけたら嬉しいです。 

さて、久しぶりの更新ですが、また(?)お試し無料配信のお知らせです。新たに無料アプリをインストールなさった方、 クリスマスやお正月にkindleを入手なさった方も、よかったらぜひどうぞ。

1/3 午後5:00頃まで 無料配信中です。 

【分冊版・上巻】ネガティヴ・ケイパビリティ:絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行 

 

【分冊版・上巻】追憶のシャーロック・ホームズ:ワトスン博士最後の告白~ 

 

 

 無料アプリはこちらでどうぞ。Windows PC、Mac、各種スマートフォン、タブレットでお楽しみいただけます。読み放題のkindle Unlimitedにも対応しています。サンプルダウンロードもぜひご活用下さい。(自分は気になった本はサンプル落としまくってます!(笑))

 

kindle無料アプリ 

 

今年ものんびりペースの更新になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ハロウィーン無料配信+冬コミに出ます。 [アナウンス]

ハロウィーンにちなんだお話を無料配信仲です。前にも無料化している作品ですが、シリーズのお試し短編で設定ご案内つきですので、前作未読の方もぜひどうぞ。

 

無料配信
10/30(pm 5:00)~11/1(pm 5:00)
(時間は前後することがあります。ダウンロードの際は価格欄をご確認下さい)
History: 低体温男子イアン・ワージングのハロウィーン

(イアン・ワージングシリーズ2)

マイルドBL・MM系小説(R15程度)です。

 

ゲイの歴史ライターイアンの、元彼との回想をまじえたハロウィーンのお話。比較的コミカルなシリーズ中では異質のしっとりとした一本になっています。お楽しみいただければ幸いです。

 

*      *      *

【コミケ出展のお知らせ】

 

年末のコミックマーケットにスペースを頂けました。kindle本の紙版同人誌のほか、未電子化作品、二次同人誌の在庫も持参予定です。おついでがありましたらぜひお立ち寄りください。

 

12/30(金) 西み29b

SUSSANRAP(サッサンラップ)

(「創作JUNE/BL」エリア)

 

コミケウェブカタログ/SUSSANRAP

(要ログイン)

 

コミックマーケット公式サイト 

 


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

kindle読み放題、無料体験できます。 [アナウンス]

遅ればせながらのお知らせです。すでにお使いの方もいらっしゃると思いますが、Amazonがkindle本の定額読み放題をスタートさせました。月額980円ですが今は無料体験できるので、夏休みの乱読に(?)いかがでしょうか。
 
 
30日間無料体験できます。(8/20現在)
スマホ等のkindle無料アプリでも利用できます。

(画像はリンクしていません。m(_ _)m)
kindle-unlimited-1.jpg

 
うちの本も『追憶のシャーロック・ホームズ』などを中心にこちらでお読みいただいています。ありがとうございます! 他の本もすべて対象になっていますので、ぜひこの機会にご覧頂けたら嬉しいです。
 
牛乃あゆみ 著者ページ
こちらからすべての本をご覧いただけます。
ホームズパスティーシュ・パロディ漫画の他、リジナル微耽美系小説、マイルドBL小説など。
分冊版・英語版を含めて現在17種配信中です。 

(画像はリンクしていません。m(_ _)m)
書影小説.jpg
書影まんが.jpg

もともと海外のストアではやっていたサービスで、こちら経由でたくさんの新しい読み手さんに発見していただきました。日本ストアでも新たな読み手さんとの出会いがあるといいなあ、と期待しています。ぜひご活用下さいマセ。 

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

SF風エンタメ小説(パスティーシュ要素あり)公開中 [アナウンス]

久しぶりの更新です。ついでにサイドバーも整理し、いろいろ新しい情報に更新しました。

いろいろお知らせがたまってしまってるのですが、まずは新規公式サイト掲載の連載小説のお知らせです。すでに完結済みです。

表紙イラストのコピー.jpg

1999年、「その地球」。とある軍事施設から二人の青年物理学者が逃亡する。
二人は新技術が軍事利用されることを嫌い、施設のデータを消したのだった。
その日、同時に大規模なデジタルデータ消失事故――「大消失」が起き、世界は大混乱に陥る。
30年後のパリ。古本屋を営む若者ガブリエルのもとに、
幼い兄弟が「コナン・ドイルの署名入り」という書類が持ち込むが――。

 
 交霊航路:僕と彼女とドイル文書は永遠に
(目次リンクとあらすじ・キャラクターなどまとめページ) 

 一見無関係な出来事やキャラクターが、不思議なつながりでパターンを描きながら関係していくSF風エンタメ小説です。がっつりパスティーシュではありませんが、コナン・ドイルせんせや某探偵さんもちらりとお出ましいただいています。(…たとえばドイルせんせとホームズさんでなく、アガサ・クリスティーとポワロさん等の「作者とその創作キャラクター」に差し替えても成立するお話です。ドイルせんせが好きなのでこうなりました(^^))

同人誌として2006年に厚いコピー誌を出し、昨年改稿して電撃小説大賞さんに無茶な応募(同人誌発表済みの長編を送れるところが他になかったのです(^^;))、一次選考通過で講評を賜り、そちらを参考に少し手を加えて分割し、ネット連載公開版としました。 現実の人間と架空の人間の垣根、性別、時間を飛び越えて続いていく「魂の腐れ縁」の物語です。シリアスに始まりますが、だんだん明るい話になっていきます。ご講評ではホームズが出てくるところが読者を狭めるとのご指摘をいただきましたが(^^;)、予備知識はいらない物語として書いています。ホームズ好きな方にもそうでない方にも、お楽しみいただけたら嬉しいです。

新規サイトは電子書籍PR用のサイトなのですが、無料の読み物をたくさん置くことを目指しているので、既刊『王殺し』の関連コラムなども置いています。少しずつコンテンツを増やしていきますので、ぜひこちらと合わせてお楽しみください。

SUSSANRAP Kindle Books 
書影小説.jpg

pixivなども含めると、ずいぶんコンテンツ置き場がばらけてきてしまいました。でもここのブログは二次とオリジナル両方の「デモ」を掲載できる気軽なスペースなので、残したいと思っています。今後ともよろしくお願いします! 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

お知らせ三つ:フリーブックはじめました。他 [アナウンス]

 ご無沙汰しておりました。ものすごく久しぶりの更新です!いろいろご報告があるのですが、まずは無料配信コーナーから。

SUSSANRAP Free eBooks
無料電子書籍ダウンロード

(PC用ページなのですが、なるべく細く作りました。不都合が生じましたらお知らせ下さいませ(^^;)) 

 同人母艦サイトで始めたお土産コーナーです。kindle本をお読みいただいている方へのササヤカなお礼と、kidnle無料アプリのお誘いをかねて、過去の同人コンテンツを電子化しました。初回はSHERLOCK二次の『36時間のサファリ』。このブログやpixivでも公開しているので、すでにお読みいただいている方が多いと思いますが、まとめてお読みいただくのも一興かと思います。(ごく少量改稿もしております)よかったら落としてやってくださいませ。

ファイルはkindleで読めるmobi形式です。お持ちでない方はリンク先から無料アプリのページへ飛べますので、ぜひご利用下さいませ。

次はベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー・ミラーのダブルキャストだった舞台『フランケンシュタイン』の両バージョン比較レビューの予定です。こちらもご興味もっていただけましたらぜひ。

もうひとつ、ご紹介が遅れましたが、少し前にkindle本専用のサイトを作りました。同人活動・二次創作にはほとんど言及しないので、ひらたく言うと「よそゆき」という感じでしょうか(ブログでは多少趣味的なトピックも書いてしまいますが……(笑))。あと、母艦サイトがPC向け仕様なので、スマホで見ていただいたときにスマホ仕様になってくれる仕様で作ってみました。 

二次と切り離した代わりに、オリジナルの短編小説、連載小説や、既刊に関連したコラムなどを掲載しています。耽美系とSF系混在、連載小説はホームズパスティーシュの要素もあり、という相変わらずの感じですが(^^;)、コンテンツはどんどん増やしていますので、ときどきお立ち寄りいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。m(_ _)m

SUSSANRAP kindle books 
書影小説.jpg

 週末にはイアン・ワージングシリーズの新刊無料配信も行います。3月のJ庭で配布した作品で、細部を改稿しています。前のものより少し長いですが、今回はコミカル度高めです。ぜひぜひご覧くださいませ。

無料配信予定
2016/5/20(金)夕方5時頃~5/22(日)夕方5時頃 

ギャザリング・ストーム: さむがり男子イアン・ワージングのゴースト修行 [イアン・ワージングシリーズ]

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

新刊配信開始しました。『ネガティヴ・ケイパビリティ:絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行』 [アナウンス]

3月のJ庭新刊電子版が、Amazonで配信開始となりました。 kindleオーナーライブラリーにも登録しています。

ネガティヴ・ケイパビリティ:
絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行

低体温トラウマ男子、せつなくやさしい癒し旅。

いちおうBL風ではあるのですが、「風」というくらいでサービスシーン(?)が主眼ではない、穏やかなソフトBLです。理屈屋だけど傷心中のイアンの繊細な心理と、天然系現地ガイドくんとの交流、そして彼が見つけるある事実が絡んで展開していきます。ちょっと愉快ですっとぼけた会話や、さりげない思いやりの心理など味わっていただけたら幸いです。読み心地は軽く穏やかな作品ですが、大きなテーマもじんわりと込めてみました。

●kindleオーナーライブラリーにて無料レンタルでお読みいただけます。(kindleをお持ちでAmazonプライム会員の方)

●kindleほか、スマホ、PC等のkindle無料アプリでもお読みいただけます。

サンプルで第二章の途中くらいまでダウンロードできます。ぜひ覗いてやってください。 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

Duel in Eternity(サンプル) [ドラキュラ]

ホラー御三家アンソロジーさん(一冊目)に寄稿させていただいた、『新ドラキュラ・悪魔の儀式』後日談という設定の二次小説(ピーター・カッシング&クリストファー・リー)のサンプルです。(一冊目は在庫あり、2015/6/21のムーパラにて二冊目発行予定。そちらにも寄稿させていただいております)

映画未見の方のために少しだけ設定を。ピーター・カッシングはこの映画と前作 『ドラキュラ'72』で、ヴァン・ヘルシングの子孫ロリマー・ヴァン・ヘルシングを演じています。 彼はロンドン大学の人類学教授ですが、先祖代々の家業としてオカルト研究もしており、 二作品で現代(1970年代)に甦ったドラキュラ(クリストファー・リー)を倒しています。

※アンソロジーは検索避け(女性向け)本なので、告知はイベントスペースで配布しているペーパーと、個別のお問い合わせへの対応のみさせていただいております。ご興味をもっていただけましたら、お気軽にどうぞ。

 *       *       * 

(トビラ絵)
Pixiv用トビラ絵.jpg

 

 念のため、移動は日の出ている時間を選んだ。日没の前に教会を見つけ、そこで夜を明かし、明るくなってから仮眠をとってまた移動した。イタリアの片田舎の質素な修道院にたどり着いたのは、夕刻だった。茶色の修道服を着た修道士が、仕立ての良いコートを着た老紳士を迎えた。紳士は帽子をとった。

 紳士が数年前に会った高齢の修道士は、暗い自室で椅子に座っていた。白内障で視力を失っていたが、紳士が入っていくと迷わずに両手を伸ばした。手のひらに厚く包帯が巻かれ、そこから出ている指は萎えたように冷たい。
「たいへんなものを背負われた」
  修道士は紳士の手を握り、同情に満ちた顔で言った。
「それは私が授かったものと同じ性質を持っている。だがあなたのそれは、神でなく不浄のものが与えた。それは傷ではない。呪いです」
「はい」
  紳士はうなずいた。
「お力を借りたいのです」
「私には癒せない」
「いいえ、それはいいのです」
  紳士はポケットから小さな箱を取り出した。
「これを預かっていただきたい。あなたに頼るしかありません」
  紳士は、包帯の巻かれた修道士の手にその箱をそっと握らせた。包帯の下には聖痕がある。キリストが磔刑の際に杭を打たれたのと同じ箇所に、いつまでも癒えない傷が口を開けている。修道士は箱の表面を撫でるとつぶやいた。
「どうしてこんなものが手に入ったのです?」
  紳士は静かに語り始めた。それは数日前、ロンドンの自宅でのことだった。

*   *   *   *   *

「…短剣(ダガー)は、人を殺めるためだけの道具ではないんだ」
  ロリマー・ヴァン・ヘルシングは、白い手袋をした手で刃物をつまみ上げた。二年前自分に向けられた刃に、書斎のランプの光が鈍く反射する。刃先はロリマーの血がかすかにこびりついたままだ。マレー警部は首をかしげた。
「平和的な道具とも思えないですね。隠し持つ凶器に向いたサイズだ」
「たしかに。だから死と暗殺の象徴でもある…だが、小さいのは常に身につけるためだ。自分を守るための道具でもあるんだよ」
「人が殺せることに変わりはないですよ」
「…奥深い問題だね」
 ロリマーはテーブルの上を眺めた。若者の持ち物だったとは思えない、古めかしいメダリオンや、一見して数百年前のものとわかる羊皮紙が、ポリ袋に入って並べられている。この短剣もその中の一つで、吸血鬼のしもべだったジョニー・アルカードの家から押収されたものだった。アルカードはこの短剣でロリマーの左腕に切りつけた。だが鏡に反射した日光に追いつめられ、シャワールームで惨めな最後を遂げた。人間にはなんの害もない清潔な流水が、吸血鬼どもには命取りになる。

 ロリマーは刃物を番号のついたポリ袋に戻した。警部は別に持っていた鞄のふたをあけた。
「…今回は、『あれ』に関して残った証拠はこれだけです」
  警部はいまだに「吸血鬼」とは言いたがらなかった。二十世紀のロンドンで、吸血鬼が政府の要人やノーベル賞学者を籠絡していた? 芝居の筋書きにしても馬鹿げている。警察でそれらはすべて隠蔽され、ペラム・ハウスの事件は表沙汰になっていなかった。ドラキュラに利用され、新種のペスト菌に侵されて死んだ保安局最高責任者ジョン・ポーターは、脳溢血で急死したと報道されている。
  警部は高さが二十センチほどのガラスの瓶を取り出した。灰が入っている。ロリマーの眼が鋭くなった。
「…光を通さないものに入れたほうがいい。もし長く保存したいなら…」
「保存したいのはあなたのほうでしょう。一級の研究材料だ」
  警部が言うと、ロリマーは警部を見て苦笑した。
「正直に言えばね」
  警部は一瞬微笑してから、まじめな顔で言った。
「…このままにしておいて良いものでしょうか」
「とりあえずの処置だよ。あそこに放置するほうが危険だ」
  ロリマーは瓶を手に取り、ランプの光にかざした。ペラム・ハウスの裏手で倒したあの長身のドラキュラが、こんなに軽い灰になってしまう。警部は紅茶をすすると、眉をしかめてロリマーのかかげる瓶を見た。
「ここからその…復活することはありうるんですか」
「もちろん」
「いっそ海にでも捨てたほうが良くはないですか」
「それも考えたんだが…」
  ロリマーは瓶を置いて、自分の額を撫でた。
「過去にそうした例はあるんだ。だがその後復活している。偶然が重なったのかもしれないが…捨てたらその偶然をコントロールできない。確実に葬る方法がわかるまでは、安全に保管しておかないと」
「あなたが持っているのが一番安全では? 避けるべきことをすべてご存じだ」
「それはどうかな。私はもう年寄りだ。この先長く責任は負えないし…」
  ロリマーは警部を見た。
「ジェシカに重荷を負わせたくないんだ」
「ああ…お気持ちはわかりますよ」
  ジェシカ・ヴァン・ヘルシングはロリマーの孫娘で、若く美しい女性だ。落ち着いた態度と祖父に劣らぬオカルト学の知識を持ち、先日の事件にも祖父と共に関わった。警部は、ドラキュラの伴侶にされかけた彼女をその手で救い出したのだった。警部はカップを皿に戻した。
「…どちらにしろ、これは僕らには公表できない証拠です。だがあなたには研究材料だ。今晩一晩はお貸しできますよ。あいにくそれ以上は無理ですが…今のところは物証扱いですから」
「感謝するよ。一晩でもありがたい」
「スコットランドヤードに来ていただければ、いつでも閲覧許可を取れますが」
「ああ、わかっているよ。だが文献と照らし合わせるにはここでないとね」
  ロリマーは手袋をとり、警部が持参した証拠物品の貸し出し書類にサインした。
「今これを調べることで、何がわかるんですか」
  警部はテーブルに広げた品々を振り返った。灰以外は二年前の事件に関するものだ。ロリマーは微笑した。
「…さあ、当てがあるわけじゃない。ただ思いついたんだよ。それに、ドラキュラを戦う相手でなく研究対象にするのは、私にとっては普通の生活に戻るということだからね」
「…何よりです。普通の生活っては」
  警部はロリマーがサインした紙をたたむとポケットに入れた。

 

*   *   *   *   *

 一人になると、ロリマーはまた手袋をはめ、アルカードの遺した羊皮紙をポリ袋から取り出し始めた。…伝承によれば、ドラキュラの起源は十五世紀にさかのぼる。だが実際はもっとさかのぼるのかもしれない。ドラキュラは個体というより、潜伏しては発現を繰り返すウイルスのようにも考えられる。意志と記憶を持つウイルス。
  十字架や聖水に効果があるのは確かだ。だが吸血鬼にとってのキリストは、たんにそれまで存在しなかった天敵が現れただけのことかもしれない。だとすれば、吸血鬼の起源は人間の歴史単位を大きく越える可能性がある。
  文献ではすでにそういう仮説があったが、ロリマーはそれらを思い出したのではなかった。頭で考えたというより、実際にドラキュラが崩壊するさまを見て、直感として得た印象だった。一方で、自らの手で杭を打ち込んだ感触――たしかに肉体が存在し、流れた血は本物に見えた。だが普通の人間とはどこか違うのも確かで、それはうまく言葉にすることができなかった。

 ロリマーはこの二年間でドラキュラを二度倒していた。だが実際に相対した時間は長くはない。ましてや間近く寄ったのは、二年前に朽ちた教会で争い、家に伝わる銀の短剣を突き刺したときだけだ。だがなぜか、その牙の生えた口から漏れる生臭い息を、その場にいるように思い出すことができた。その声はまるで耳を通さずに、直接頭の中に響くようだった。つい先日聞いた、最後の言葉がよみがえった。
『わが復讐は幾世紀にも続く。これは始まりにすぎない』
  人間の言葉を発するドラキュラは、知的な存在に見えた。だが自分を追ってくるその眼は赤く、猛獣のように低いうなり声をあげていた。そしてその手は冷たく…。ロリマーはふと違和感を感じた。おかしい。こんな記憶を持っているはずがない。私はドラキュラの手になど触れただろうか――。

(後略) 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

(J庭新刊サンプル)ネガティヴ・ケイパビリティ ~絶食系男子イアン・ワージングのレイライン紀行~ [オリジナル]

久しぶりの更新です。3/8に参加するJ.GARDEN(オリジュネ同人誌オンリーイベント)の、新刊BL系小説サンプルです。

pixiv用仮表紙.jpg 

【あらすじ】低体温で三十代前半のゲイのフリーライター、イアンは、恋人との別れをひきずりつつ、いるのが辛いロンドンから逃れようと、気乗りのしない謎の遺跡取材の仕事を引き受ける。目的の村には「自称遺跡ガイド」の若者マークがいた。彼のガイドで埋もれた巨石遺跡を巡る途中、イアンはとある災難に見舞われ、不可解な体験をする……。

理屈っぽいイアンがマークや村人との関わりのなかで心の癒しを得る、フシギな旅の物語です。「絶食系男子」という言葉に色気を感じて(笑)できた物語(一時的な絶食男子になりましたが)で、お色気はR15程度になる予定。コミカルなシーンもあります。オリジナルですが、主役キャラの外見イメージソースは、BBC SHERLOCKのアンダーソン役ジョナサン・アリスさん。(ちょっと若く美化してイメージ )メインキャラの名前が「イアンとマーク」ですが、某兄上とリアルパートナーさんのイメージはまったくありません。

じつはまだ現在仕上げ途中なのですが、来週のPRを兼ねて投稿させていただきます。(間に合いますように!)読みきりですがちょっと長めのお話なので、ここは冒頭のメインキャラが出会うところまで。作品後半にBLっぽいシーンやちょっとした歴史ネタが入ります。
(当日は、さ06b SUSSANRAPにてお待ちしております。よろしくお願いします♪)
J.GARDEN 公式ページ

*      *      *      *      *      *

(本文前エピグラフ)

僕が言っているのは、
ネガティヴ・ケイパビリティ(受容する負の能力)というものだ。
先の読めない状況や、理解を超えた神秘や、
疑念の中に人があるとき、
事実だの、理屈だのを求めて苛立つことなく、
その中にたたずんでいられる、
その能力のことだ。

――ジョン・キーツ 1817年1222日   
 (ジョージ&トマス・キーツへの手紙より)

 *      *      *      *      *      * 

(本文・wordからコピーしたらなんだか改行が広くなってしまったのですが、修正法がわからないのでこのままアップします。ご了承ください)

 ヴィクトリア駅へ向かうキャブのなかで、ドアにもたれたイアンは目をとじた。

『…いつも冷たいな、君の体は』

 誰かの懐かしいささやき声が耳に響いた。ずっと思い出さなかったのに。イアンは無意識に、自分の体を抱くように腕を組んだ。

『あっためてやりたくなる』

 唇と体に、彼に触れられたときの温かさがよみがえった。なんでこんなことになってしまったんだろう? 考えても答えは出ない。

 

 …バイセクシャルとゲイのカップルが、ありふれた理由で別れた。それだけのことだった。妙に覚えてるのは、年代ものの高いワインをどっちが引き取るかでもめたこと。今思い出すとコントみたいだ。一番頭にきたのはあの言葉だ。

『魔がさしたんだ。彼女だって本気じゃなかった』

 本気じゃなかった? 遊びならなんでもありか? いつもいつも勝手な屁理屈を。

『いつもってどういう意味だ? 君は僕をそんなふうに……』

 思ってたよ。気がつかなかったのか? 五年も一緒に暮らしてたのに。

 

 ワインは僕が勝ちとって、彼は山のようなジャズのレコードを抱えて去った。もともと彼の物だった。二、三十枚は割ってやったと思う。彼女に慰めてもらえばいい。僕よりずっとやさしいのは知ってる――そう思った。

 

 信号待ちで車が停まり、イアンは目をあけた。窓の外を見ると、今結婚式をあげたばかりらしいカップルが目に入った。一人は背の高い痩せた女性で、ウェディング・ドレスを着ている。もう一人は少し背が低く、太っていて黒いタキシードを着ている。胸が大きく、遠目にも女性だと分かる。

 二人がキスをすると周りの人々が歓声をあげた。通りがかりのやじ馬までが写真を撮っている。式場の前には花が飾られ、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字。性的少数者を指す)の権利を主張する虹色の布があしらわれている。

 

 2014年3月29日。イングランドとウェールズで、今日から同性間の婚姻が正式に認められる。これまでもシビル・パートナーという中途半端な制度はあり、政府は同性パートナーとの生活を認めていた。しかしこれからは異性間の結婚とまったく同じだ。同性愛者たちの悲願だった。

 この歴史的な勝利の日に籍を入れようと、日付が変わった直後から大勢の同性カップルが手続きをし、結婚式をあげていた。――喜ばしい日。耐えられない。ふさがりかけた傷に、むりやり塩でもすり込まれるような気分だ。一刻も早くロンドンから離れたい。

 

 車が動きだした。イアンは再び目をとじた。これから行く田舎の村なら、道端でこんな光景に出くわさなくてすむだろう。平原に巨大な石が散在し、そこに人口よりも多い羊が群れるような土地ならば。

 

 もらった仕事は『辺境のレイラインを行く』という、イアンには存在価値が感じられない連載枠の記事だった。リレー形式で毎回別のライターが書いている。行く場所は編集部が割りふる。ストーン・ヘンジのような古い巨石郡や古代の聖地が、地図のうえで見ると直線状に並ぶというのが「レイライン」の定義だった。昨日イアンが聞いた説明では、夏至の祭や星の観測と関連づけて語られているらしい。…ばかばかしい。地図の上にペンで引いた線が、実際には何キロの幅になると思ってるんだ? こんなものと数日つきあわなきゃならない。そう思うだけで気が滅入る。いつもなら、こんな仕事は絶対にとらない。…でも今は、ここから逃れられるならなんでもする。ロンドンにいたって気が滅入るばかりだ。

「着きましたよ」

 運転手の声がして、イアンは目をあけた。

 *      *      *      *      *      * 

「それならマークだ」

「マークだな」

 パブのカウンターを囲んだ男たちが笑い出した。笑っていないのは、カウンターの向こうのむすっとした老店主だけだ。もっともこのかぎ鼻の老人は、来たときからまったく笑顔を見せず、もくもくとビールをついでいる。客も中年以上の男ばかり。絵に描いたような田舎の村のパブだ。

 

 列車に長く運ばれ、降りた街でレンタカーを借り、さらに二時間。途中の風景は退屈な起伏を繰り返す草原と羊。たまに目に入る柵と畑が、かろうじて文明人の存在を思わせた。イングランド北部の目的の村は、近くにある小さな湖に観光客がときどき立ち寄るものの、観光地とは呼びがたい地味すぎる村だった。しかもイアンが見に来た巨石は、湖と反対側の険しい区域とハリエニシダの群生地に埋もれ、「レイライン」愛好家にもほとんど認知されていない。

 

 村に着いたイアンは、まずはパブを探した。観光案内所などないところでは、情報を集めるにはパブが一番だ。歴史調査のフィールドワークで身につけた知恵だった。もっとも今回は「歴史調査」とは思わないが。イアンはお愛想笑いを浮かべて、例外なくむさくるしい男たちを見回した。

「詳しい人なんですか?」

「おう、詳しいよ。ばかみたいなことまで知ってる。自称この村の遺跡ガイドだ。ここが好きで移り住んできたくらいでね。めいいっぱい協力してくれるだろうよ」

 男たちはまた笑った。…イアンは覚悟した。たぶんうんざりするほど大量の石のかけらや、過去の自慢話に付き合うことになる。話から察するに、がっしりとした中年の男だろう。赤ら顔で愛想がよくて、暇さえあれば地図とコンパス片手に荒野を歩き回り、妻から「コレクション」のことで毎日皮肉を言われているような。

 イアンはこれまでそういう人物には山ほど会ってきた。対象がなんであれ、なにかに入れ込んでいる人間はどこか似ている。そうさ、古いジャズのレコードを収集することだって――。イアンは頭を振って、誰かのハンサムな顔を思い浮かべまいとした。

「名前が傑作だよ。マーク・ストーン(印石)ていうんだ」

 そう言って、一人が彼に電話をしてくれた。

 *      *      *      *      *      *

 現れた「マーク・ストーン」は、意外にも若い男だった。たぶん二十代前半だろう。イアンより十歳は若い。ニット帽から赤っぽいブロンドの巻き毛をはみ出させ、ジーンズにダウンジャケットを着て、本を数冊抱えていた。雰囲気はロンドンのだらしない学生と大差ない。そして人なつこい満面の笑みを割り引いたとしても――鼻筋が通って目が大きく、可愛い顔をしていた。二人は握手して、テーブル席をひとつ占領した。

「自称遺跡ガイドです!」

 マーク・ストーンはそう言って、落ち着かない声で笑った。興奮しているようだ。ちょっと苦手なタイプだな、とイアンは思った。

「なんでも聞いてください! 雑誌ですって?」

「ええ、あとで掲載号を送りますよ」

「いや、まとめて注文しますよ。みんなに配らなきゃ。楽しみだなあ。ここの遺跡は過小評価されてるんですよ」

 マークはカウンターを振り返り、急に背を丸めると、声を小さくして言った。

「あの連中はね、畑を広げるのに邪魔だって、遺跡の石を砕いて捨ててたんですよ。信じられます? 僕が説得して、今はそんなことさせてないけど。まだバカにしてるけど、観光資源になるとわかれば彼らの気も変わります。あ、村長は味方ですよ。あとで紹介しましょう」

 …あまり大きな期待をされても困るな、とイアンは思った。ただのトンデモ雑誌――いや、熱心な愛好家が買う雑誌、と言っておこう――の、後半のモノクロページの記事だ。読者数そのものは安定していて、過去にはたしかに「観光地」も生み出したことがある。だがその確率はべらぼうに低い。ここにいる間、村の派閥争いなんかに巻き込まれるのもごめんだ。できるだけ早く切り上げて帰ろう。イアンはマークが持ってきた数冊の本に目を落とした。

「これは?」

「あ、ジョン・ミッチェルの本とか。持ってるかもしれないけど、念のため」

 イアンは1冊のタイトルを見て目が点になった。『アトランティスの記憶』? 冷汗が出てきた。そっちの路線とつながるのか? いくらなんでもついていけないぞこれは――。マークは嬉しそうにイアンの顔をのぞきこんだ。

「こっちはトム・レスブリッジ。それとポール・デヴェルー。あ、アレクサンダー・トムの論文掲載誌って見たことあります? レアものですよ」

 マークは少し自慢げに古い冊子を持ち上げた。イアンは目を細めてまばたきした。

「…あー、すいません、その……」

 マークはようやく気づいて、さもあきれたという顔になった。

「知らないんですか? 巨石遺跡の記事を書くのに? この分野じゃ英雄ですよ!」

 …イアンは少し恥ずかしくなった。正直ネットで似たようなところの情報をざっと調べて「やっつける」つもりだった。写真がいると言われたから現地まで来ただけだ。いつもならやって当然の、定番文献のリサーチさえまだしていない。なんせ昨日決めて今日だ。『あなたにはぜんぜん向いてないわよ』と、知り合いのさばけた編集者には釘をさされた。承知の上で、やけくそで決めた安い仕事だった。とにかくロンドンを離れたかったから。

「…趣味で書くわけじゃないんです。仕事で」

 言いながら、やっぱり恥ずかしいと思った。プロなら余計に言い訳にならない。マークは気の毒そうに言った。

「嫌いな仕事をしてるんですか? 心の英雄もなく?」

 …心の英雄ときたもんだ。イアンは苦笑した。

「いや、今回はその……臨時で……じつは専門外なんです。いつもは歴史関係の記事を書いてて……」

「でもこれ歴史でしょ? 古代史」

「…うー……」

 イアンは言葉に詰まった。「アトランティス」とロイド・ジョージの外交政策を同列に扱う気には絶対になれない。マークは腕組みした。

「じゃ、あなたの英雄はデヴェルーじゃなくて……」

「…そう、うんまあ……」

「…ダン・ブラウンとか?」

「ありゃ歴史じゃない!」

 イアンは思わす大声を出した。

「娯楽小説じゃないか!」

「でもキリストとか……」

「違う違う。僕がふだん扱ってるのは史実だ。ブラウンは小説家だ。題材に歴史的なキーワードは使っても根本的にフィクションだ。わかるだろう? そりゃ分厚いから、読めば達成感は…あるだろう…けど……」

 自分の声が大きくなっているのに途中で気づき、イアンは声を落とした。マークはさらりと答えた。

「いや、読んでないです。テレビで映画見ただけ」

「…あー……」

「ええと、トム・ハンクスの」

「……そう」

 イアンは呆けた顔で黙り込んだ。マークは身を乗り出した。

「言っときますけど、ここの石はすごく古いんですよ。たぶんストーン・ヘンジに負けないと思う。僕の見たところでは」

「…年代はわからないんでしょ?」

「調べましたよ」

「ほんとに? ここのウェブサイトには載ってなかったけど……」

 イアンが唯一事前に見たのは、依頼主の雑誌編集部から教えられたこの村のウェブサイトだった。2ページしかないお粗末なもので、もちろん石のことなど載っていない。マーク・ストーンはないしょ話をするように言った。

「個人的に調べたんですよ。ダウジングで。僕は振り子でやるんですけど」

 イアンは遠い目をした。あれか。手に持った振り子やL字型の棒に答えを聞く、ウィジャ・ボードみたいなやつ。…目の前の若い男が平原に立ち、大きな石のかたわらで振り子をクソ真面目に見ているのを想像して、イアンはため息をついた。いくら可愛い顔をしててもアウトだ。

「…悪いけど……あー……ごめん、僕はそういうのは……」

 マークはフンと鼻を鳴らした。

「別に驚きませんよ。よくある反応だ。じゃあ何を信じてるんです? 放射性ナントカ?」

 イアンは鼻を掻いた。

「…放射性炭素年代測定法? うん、それならまあね」

 マークは勝ち誇るように言った。

「レスブリッジはダウジングでストーン・ヘンジの年代を測定したんです。で、あとでその放射性ナントカで測った数字は一致してたんですよ」

「ははは、話としては面白いけど、そういうのはよくあるよ。たいていは出どころを見ればモンスの天使みたいなもんだ」

「…なにそれ」

「知らない? 第一次世界大戦の。ドイツ軍に包囲された英軍が、天使の集団に救われたって話だよ。従軍兵士の証言てのがいっぱい出た。でも正体は、当時発表された小説との混同なんだ。だいたいこういうものは集団心理が……」

 マークはテーブルを叩いて立ち上がった。

「――あんた何しに来たんだよ!」

 *      *      *      *      *      * 

 わかってる。彼は悪くない。イアンは薄暗くて狭い車のなかで大きな地図と格闘しながら、繰り返し同じ言葉を……思い描く相手を変えて……心の中でつぶやいた。――そうだ、悪いのは彼じゃない。

 

 泣きっ面に蜂だった。村で最高の「専門家」に嫌われたあげく、予約していたホテル――これも村で唯一――の老朽化した水道管が崩壊し、客室は水浸しで泊まれなくなった。(ちなみに今日の宿泊客はイアンだけだった)仕方なく、レンタカーのシートで後悔にふけっているのだった。先が思いやられる。それでも放り出して帰るわけにもいかない。

 

 ようやく地図を広げた拍子に、ラップトップパソコンが膝から滑り落ちた。それを拾おうと、地図の下で滑稽な形に体をひねった。…そこにコンコンと窓を叩く音がした。びっくりして振り返ると、マーク・ストーンが車の外に立っていた。ニット帽はなく、この寒いのにダウンジャケットの前を大きく開けている。ぴったりしたTシャツごしに、胸筋が発達しているのが見てとれる。こじんまりと鍛えた体にイアンは一瞬目を奪われた。

「こんばんは」

「…こんばんは」

「ホテルが泊まれないって聞いて。そこじゃ仕事できないでしょ」

「あー…まあ……」

「ええと、ソファで寝るんでよければ……」

 マークは車の後ろのほうを振り返ってから向き直った。 

「…うちに来ませんか。汚いけどテーブルはあるし、車よりはましだ」

「……」

「庭に車もとめられますよ」

 イアンは口をあけたまま戸惑った顔を向けた。マークは頭を掻いた。

「少なくとも地図は広げられるし」

「…うん、助かる」

「車で行きます? なら乗って案内するけど」

 イアンはため息をつくと、地図をたたんでパソコンを拾い、隣のシートを空けた。頭の端にバカな、無関係なことがよぎった。ひょっとして彼は同類だろうか、と。

 *      *      *      *      *      * 

 マークの家は村から少し離れた古い一軒家だった。家というより、大きな小屋という感じだ。一人暮らしで、ここを借りて村で不定期の仕事をしながら絵を描いているという。アトリエ兼寝室と居間、キッチンとバスがあり、外に小さな納屋があって物置になっている。イアンは居間のソファを借りることになり、そこに荷物をほどいた。テーブルとランプがあり、なんとか仕事ができそうだった。

 いったん自室に消えたマークが居間に戻ってきた。ジャケットを脱いでいて、ぴったりしたTシャツとジーンズという姿だ。イアンは体を見ないように意識した。マークは遠慮がちに言った。

「ええと…ひとつ言っておきたいんだけど……」

「なに?」

「…こんなこと初めてなんだ」

 イアンは緊張するのを感じて、顔色に出ていなければいいがと願った。…どういう意味だ? 男を家に連れ込むのが? 彼がそのつもりだとしたら、面倒なことになるぞ。たしかに、過去に一目でゲイだと見破られたことはある。そしてこの彼はけっこう魅力的だ。でも今はとてもそんなことに応じる気はないし、仕事を終わらせたいだけだ。だが断っても気まずくなるだろう。家についてきたことで誤解されたかもしれない……いやいや、先走りしすぎだ。会話のもっていきようで、まだ軌道修正はできる。

 …ここまでを一気に考えて、イアンは咳ばらいした。

「…な、なにが?」

「ホテルのトラブル。今まで聞いたことがない。小さいけど、ふだんはとてもいいホテルなんです。リピーターもいるし。タイミングが悪かったんだ」

「ああ……」

 そういうことか。イアンの肩から力が抜けた。

この「自称遺跡ガイド」は、都会から来たライターがホテルの配管トラブルに――加えて言えば「ガイド」との喧嘩にも――腹を立てて、雑誌でこの村をこき下ろすんじゃないかと素朴に考えたらしい。イアンは自分がよけいな気を回したのがおかしくなって苦笑した。

「心配しなくていいよ。ホテルのことなんか書かない。テーマは石のほうだ。『ロンリープラネット』とは違うから」

「ならよかった」

 マークは安心したように微笑んだ。イアンも大いに安心して微笑んだ。

「じゃあ」

 部屋から出て行こうとする彼を、イアンが呼び止めた。

「…あの、まだガイドをする気はある?」

 マークは振り返った。イアンはテーブルの上に広げた地図と、ノートパソコンに両手を広げてみせた。

「じつはお手上げなんだ」

「…でも……」

「…悪かった。説明させて。たしかに僕はレイラインだの、謎の古代人だのにはこれっぽっちも興味がない。それは確かだ」

「それはもうよく知ってます」

 ぴしゃりと言われてイアンはうなずいた。

「…だよね。どうかしてたよ。わざわざ来てくれた君にあんなことを言うなんて。…でも誰かが休暇にここに来て、いい空気を吸いながら想像を楽しむのはいいと思ってる。もし観光客が少し増えて、それがこの村の役に立つとしたら、嬉しいとさえ思う。これはほんとだ。そうなるかどうかはわからないけど」

 マークは探るような目でイアンの顔を見た。イアンは一言一言を考えながら、ゆっくりと続けた。

「…これから書く記事を読むのが…どんな人たちかはわかってる。彼らをバカにする気はないんだ。人それぞれだし、証明されてないからってすべて否定するのはフェアじゃない。僕はただ情報を伝えればいい。さっきは傲慢だった。僕の悪い癖なんだ。なんでも一人で決めつけて……」

 …聞きなれた声がこう言ったのを思い出した。『君は話し合うつもりなんかないじゃないか。一人で結論を出してる』――

「…わかってるけどなかなか直らないんだ。でもこれは仕事だ。記事を読む人を……満足させたいんだ。だから…いやでなければ……協力してくれないかな」

 マークはうつむいて鼻を掻いた。

「見たままを書く。私情はいれない。君は怒ってると思うけど……」

 マークは顔をくしゃっとさせて微笑んだ。

「もういいですよ。わかった」

「ほんとに」

「うん」

 マークは屈託のない顔になって微笑んだ。

「できるだけのことはする」

 イアンはほっとして、つられて笑顔になった。「彼にしては」屈託のない笑顔だった。

「ありがとう。ええと…できれば明日から頼みたいんだけど、仕事がある?」

「絵はどうとでもなるよ。今は雑貨店の手伝いもしてるけど休めるし。でも何日いられるの?」

 マークの言葉遣いが急に親しげになっていた。

「できれば二、三日で済ませたいんだけど……」

「大丈夫、それだけあればここいらのは全部回れる。一番見映えのするストーン・サークルから案内するよ。ちょっと遠くてみんななかなか行かないけど……最初に見てほしいんだ」

「いいよ。そこへ行こう」

「その地図でルートを説明しようか」

「ありがとう、助かるよ。それから、もしよければ……さっきの本も見せてもらえないかな」

 マークは嬉しそうな顔をした。

「持ってくる」

「…そうだ、ガイド料と、別に今晩の宿泊代も払うから」

 イアンは内ポケットから財布を出した。マークは笑って両手を振った。

「ガイド料なんていらないよ。それにソファを貸すだけで金なんか受け取れない」

「いや、それじゃあなんか落ち着かないし…」

 金を払ったほうが、一線を引ける。万が一彼が「そうだった」場合でも。…なにをいつまで警戒してるんだ? イアンは心の中で自分にツッコミを入れた。マークは腕組みをして考え込んだ。

「んー、じゃあ明日の晩メシおごって」

「そんなんでいいの?」

「うん、充分――」

 そこにドアをノックする音がした。

「ちょっと待ってて」

 

(つづく)

 

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『A Tender Liar』 (+イベントのお知らせ) [BBC SHERLOCK 二次創作]

【イベント参加予定】(終了後この部分は削除します)
 東京ビッグサイト 東2ホール ノ-28b SUSSANRAP

SHERLOCKエリアで、新刊はホビット(笑)です。既刊はすべて持参します。おついでがありましたら、ぜひお立ち寄り下さい。机上に並べきれないものが出ると思いますので、見本など見当たらないものがありましたら声をかけてやって下さいませ。

 直前の新刊追加告知などはpixivが一番早くなると思います。
 
 pixivにないものも含めてすべての同人誌のお試し読み、通販等のご案内ページです。
 

*      *      *      *      *      *
 
  
さて、久しぶりの小説アップです。(過去の二次ですが!(笑)) SHERLOCK既刊同人誌収録のコメディ短編。酔ったいきおいで警部と関係を持ってしまったジョンと、なにか感づいているような、いないような・・・な、おぼこいシャーロックとのスリリングな(=ほほえましい(笑))会話劇です。その後これをベースに「警部/医者の非カプJUNE」、という珍しい(?)ものをいくつか書いているので、イベント前のPRを兼ねて(^^;)まるごとアップしてみました。おヒマつぶしになれば幸いです。(紙の同人誌については文末にて)
 
 
 
A Tender Liar 
 
 
「軍隊でついた癖だな」
 レストレードが耳元で言った。ジョンは身じろぎしてけだるそうに振り返った。
「なにが」
「声を殺してた」
「そうか?警部さんも妙な癖があるな」
「ほう、どんな?」
「汚さないように気をつかってる」
 レストレードはため息をつくと、使ったタオルを丸めて立ち上がった。
「そうだ。汚すなよ」
 そう言い残して部屋から出ていった。

 ジョンはサイドボードの上の夫婦の写真を見上げた。窓から差し込む夕日に照らされている。警部は今と変わらない姿だから、最近のものだ。夫人は髪を明るいブロンドに染めている。美人だ。子供を二人産んだとは思えないプロポーションを誇示するように、体にぴったりとしたサーモンピンクのワンピースを着ている。なるほど男が放っておかないわけだ。
 そんなわけで今日も不在なのだ。夫には姉の家に泊まりにいくと言った。夫は嘘を知りながら、今朝車で妻を駅に送った。夫本人がそう言った。

 …だからといって、なぜ自分がここに?しかも居間に敷かれたラグのうえで、パンツまでおろして?ジョンは顔をしかめてジーンズを引きあげ、ベルトを締めた。

 レストレードがコーヒーを持って部屋に入ってきた。
「泊まってもいいぜ。娘たちも今日は友達の家だ」
「いや帰る。こんなことになるなんて…」
 思いもしなかった。レストレードは頭を掻いた。
「…それはこっちも同じだ」

 警察の連中は彼の隠れた嗜好を知らないという。部下を持ったら嘘でも円満な夫婦を演じる必要がある。ましてや男を相手にすることなど、絶対に悟られてはいけない。押しが利かなくなる。そう警部は言った。だがジョンの軍隊での両性的な経験をあっさり想定内だと言い、それを隠したがっているのも理解していた。だから、シャーロックと恋人同士ではないというのをなかなか信じなかった。なぜそんな話になったのか…。

 シャーロックが借りた警察の資料を返しに行った。そしてこれから非番だという彼につきあってパブに入った。話し込んでいるうちに、アルコールのせいか警部の愚痴が出た。そのうちこちらも愚痴をぶちまけ始め…果てはとんだ気晴らしをしてしまった。ジョンは受け取ったコーヒーをすすった。レストレードが急に居住まいをただした。
「ジョン、誤解しないでほしいんだが…」
「ああ、言うな。わかってる。お世辞は省こう」
 ジョンは苦笑いした。
「僕も言おうと思ってた。これは…」
「…間違いだ」
「その通り。100%」
「これから君と会うたびに気まずくなりたくない」
「同感だ」
 ジョンはいちいち大げさにうなずいた。二人は目を見交わして苦笑いした。ジョンはふと腕時計を見た。
「そろそろ帰る」
「まだ早いぜ」
「早めに帰りたいんだ」
「帰る時間を知らせてるのか?」
「まさか。たいていは勝手にやってるよ。ただ今日はハドスン夫人がいないから…」
「…気づくかな」
 レストレードは今思いついたように言った。
「さあ」
 いまさら。でもこんなことをシャーロックに知られたくはない。これはただのアクシデントだ。しかも相手は警部。冗談にしても最悪だ。レストレードは首をふりながらつぶやいた。
「…あいつを傷つけたくない」
「傷つく?だから僕らはそうじゃないって…」
「それでもあいつはこんなことを知ったら…わかってるだろ?俺たちにもあいつにもよくない」
「……」
 ジョンはしばし黙り込んだ。
「シャワー借りていいか」
「ああ、もちろん」

 バスルームにはシャンプーやらなにやらのボトルがたくさんあった。二人の娘と夫人は、それぞれが別の銘柄を使っているらしい。まるで店の売場からすべての種類をもってきたようなありさまだ。ジョンは一つあけて、甘い香りに顔をしかめた。僕らは寂しい人間だな、警部。

―――――――――――――――――――――

 スーパーに寄り、デリのパックと野菜をいくつか見つくろって部屋に帰った。
「シャーロック?」
「ここだ」
 シャーロックは顕微鏡をのぞいていた。ジョンは横をすり抜け、冷蔵庫をあけて食品を入れ始めた。シャーロックは顔をあげ、眉をしかめた。
「…なるほど」
「ん?」
 ジョンははじかれたようにシャーロックから距離をとった。シャーロックは顕微鏡からガラス板をはずした。
「塗料は二種類だ。パープルを買ったんじゃなくて、二色を混ぜたんだ。溶剤の種類がちがうやつを」
「ああ…ああ、なるほどな」
 ジョンはガラス板を見て、まるで拡大された粒子が見えているかのようにうなずいた。シャーロックはジョンが持っているスーパーの袋を見た。ジョンはそれをかかげた。
「ほら、今日はハドスン夫人が…」
「ああ、そうだったな。そういえば腹が減った。昼を食い忘れてた」
「そうか。じゃあすぐ食うか」
「うん」
 ジョンはいったん冷蔵庫に入れたレタスを取り出した。実験道具が乗った大きなテーブルを回り、小さなキッチンの電子レンジにパックを入れ、スイッチを押す。レンジが音を立て始めた。ジョンを目で追っていたシャーロックは一人でうなずいた。
「ああ…」
「ん!?」
 ジョンは持っていたレタスをシンクに落っことした。シャーロックは首をふって広げていた試料を片づけ始めた。
「なんでもない」
「なんだよ。また推理か」
「推理するまでもない。君はわかりやすすぎる」
「なにが」
「言っていいのか?」
「……」
「…自慢できることじゃない」
 シャーロックは責めるような顔であごをあげ、ジョンを見下ろすように眺めた。
「そのうちまずいことになる」
「…なにが言いたい」
「君は趣味が変わったらしい」
 ジョンはつばを飲み込んだ。シャーロックはさもあきれたというようにため息をついた。
「まあ誰とつきあおうと君の自由…」
「当てこすらずにはっきり言え」
「ははは、とんだ年上好みになったもんだな」
「年が問題か?」
「問題は他にあるだろ?年上で、子持ちで…」
 ジョンは肩を落としてうなだれた。シャーロックは勝ち誇ったように付け加えた。
「人妻」
 …ジョンはうなだれたまま眉をしかめた。
「君が借りたボディーソープは女性用だ。シャンプーは子供用。ローティーンの女の子がいる。君はその家で家族の留守中に彼女と寝てきた。シングルマザー?ちがう。彼女はベッドを使わせず、毛足の長いラグの上で済ませた。夫婦のベッドを使いたくなかったからだ。だから人妻だ」
「…………」
 ジョンは眉をしかめたまま顔をあげた。シャーロックは平然と言った。
「ありふれたことではある」
「…………アクシデントだ」
「そうだろうな。君は最近ガールフレンドがいなかった。さて、飯にしようか」
「…………」
 ジョンはシャーロックに背を向け、レタスを解体しながら、じんわりとこみあげてくる笑いをかみ殺した。バスルームにたくさんあったボトルの中には、もちろん警部が使っているらしい銘柄があった。だがわざと甘ったるい香りの女ものを使ったのだ。シャンプーが子供用なのは見分けがつかなかったが。

「…ジョン」
 背後でシャーロックの声がした。
「本当のことを言おう。罪悪感を軽くしてやる」
「…罪悪感?」
 ジョンはレタスをにぎりしめた。
「僕の?」
「ほかに誰がいる」
「…本当のこと?」
 冷や汗が出てきた。
「…こめかみに薄く擦り傷がついてる。君のワイルドな恋人は結婚指輪をはずさなかった」
 ジョンはシャーロックに背を向けたまま、思わずこめかみに手をやった。痛くもかゆくもないが、そういえば指輪があたった。レストレードは少しばかり荒々しかった。
シャーロックは静かに言った。
「…だから、彼女は本気じゃない」
 ジョンの膝から力が抜けた。
「……そうか。それは…ええとそれは…」
 ジョンは目を白黒させながらふさわしい答えを探した。
「………残念だ」
「君は本気だった?そりゃ気の毒だったな」
 シャーロックは腕組みしてにっこりした。
「外で食おう」
「なに?」
 ジョンは片手にレタスをにぎったまま振り返った。
「夕食は外で食おう」
 シャーロックの口調は妙に陽気だった。
「買ってきたのに…」
「外で食べたい気分だ。うまい中華料理をおごる」
 シャーロックはもうコートを取って歩き出していた。
「早く。腹がへってるんだ」
「…イタリアン」
「ん?」
「イタリアンだ。こっちに決めさせろ」
 シャーロックはドアへ行きかけた姿勢のまま、目を細めてジョンを振り返った。ジョンはむすっとした顔で言った。
「さんざんな日だ。気の毒なルームメイトに気をつかえ」
 シャーロックは肩をすくめた。
「じゃあイタリアン」
 ジョンは重々しくうなずいて、レタスをシンクに放り投げた。そしてゆるんだ口元を手でおさえながら、シャーロックのあとを追って階段を駆け降りた。階下のシャーロックがいくつか店の名前を言い、ジョンがその一つを叫んだ。

 玄関のドアが閉まり、家の中は静まり返った。誰もいないキッチンで、電子レンジが小さく鳴った。

【終】
 
*      *      *      *      *      *
 

この作品は同人誌『I AM YOUR MAN-Short Stories-』に収録しています。メインの中編は最初このブログで掲載した、SJ(?)シリアスもの。バスカヴィル事件の夜、宿でシャーロックとの特別な絆に気づくジョンのお話です。(もう二年前になりますね。早いなー(^^;))

警部/医者のお話はその後下記でなんとなく続いております。時系列ではつながっていますが、各々読み切りです。
 
 
 
 
 
 

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:
前の10件 | -

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。